築15年を迎える我が家のトイレ。長年連れ添った便座には無数の細かな傷が刻まれ、どんなに掃除をしても取れない黄ばみが、その歴史を物語っていた。水漏れ修理のための配管を交換できる文京区は、冬の朝に便座が放つあの突き刺すような冷たさは、毎日のささやかな試練となっていた。「そろそろ暖かい便座にしたいわね」と妻がこぼすのを聞きながら、私の頭の中では「業者」「見積もり」「高額な費用」といったネガティブな単語が渦巻いていた。しかし、もっと手軽に、この便座だけをどうにかできないものか。そんな淡い期待を胸にスマートフォンで検索を始めたことが、我が家のトイレに革命をもたらす小さな冒険の始まりだった。 「トイレ 便座 交換 自分で」といったキーワードで検索すると、画面にはDIYの成功体験談が次々と現れた。「意外と簡単でした」「30分で完了!」という景気の良い見出しに、私の心は次第に「もしかして、自分にもできるんじゃないか?」という希望の光で照らされていった。蛇口専門チームが排水口の交換を斑鳩町へ依頼するともちろん不安は大きい。水回りのDIY経験など皆無だ。万が一、作業に失敗して水漏れでも引き起こしたら、結局は業者に泣きつくことになり、かえって高くついてしまうかもしれない。しかし、ホームセンターのウェブサイトで見たピカピカの最新温水洗浄便座の価格は、業者に依頼した場合の想定額の半分以下だった。この差額は、しがないサラリーマンにとってあまりにも魅力的だ。「よし、やってみよう!」その決意は、一割の無謀さと九割の節約根性から生まれたものだった。 決意したからには、準備を怠るわけにはいかない。週末、私はメジャーを片手にトイレという聖域にこもった。ネットの記事で学んだ知識を総動員し、便座を固定している二つの取り付け穴の間の距離(14cm、よし標準サイズだ)と、その穴から便器の先端までの長さ(47cm、なるほど大型のエロンゲートサイズか)を慎重に測定する。このサイズ確認こそが、DIYの成否を分ける最初の、そして最も重要な関門だと自分に言い聞かせた。サイズさえ分かれば、あとは夢の機能を選ぶだけだ。暖房機能、洗浄機能、乾燥機能、脱臭機能…まるで子供の頃にロボットのスペックを眺めるように胸が高鳴った。結局、予算内で最も機能が充実していたモデルをネット通販で注文。数日後、大きな段ボール箱が玄関に届いた時、私の小さな冒険は、いよいよ本番のゴングを鳴らした。 説明書を熟読し、モンキーレンチと雑巾を相棒に、私は長年連れ添った古びた便座と対峙した。安全第一、まずはトイレの止水栓を固く閉め、コンセントを抜く。便器の裏側に手を伸ばし、便座を固定しているナットを探す。あった。しかし、こいつが長年の湿気と汚れで固着し、私の力ではびくともしない。ここで最初の試練が訪れた。潤滑スプレーを吹き付け、数分待ってから渾身の力で回すと、ギギギ…という鈍い音を立てて、ようやくナットが緩み始めた。この瞬間の安堵感は忘れられない。古い便座を外すと、その下には15年分の汚れが地層のように蓄積しており、思わず目を背けた。しかし、これもDIYの醍醐味。洗剤とブラシで徹底的に磨き上げ、便器は新品のような輝きを取り戻した。 いよいよ新しい便座の取り付けだ。説明書の手順通りにベースプレートを固定し、便座本体をスライドさせると「カチッ」という小気味良いロック音が響き、それは完璧に便器と一体化した。止水栓を開け、コンセントを差す。恐る恐る操作パネルのボタンを押すと、じんわりと温かい便座が私を迎えてくれた。完璧だ。私は思わずガッツポーズをした。かかった時間は約1時間。汗と少しの汚れにまみれたが、その達成感は格別だった。リビングで待っていた妻は、生まれ変わったトイレを見て「すごい!まるでホテルのトイレみたい!」と歓声を上げた。たった一つの便座を交換しただけなのに、我が家のトイレは間違いなくアップグレードされ、家族のQOL(生活の質)は格段に向上した。もしあなたが便座の古さに悩んでいるなら、ぜひDIYという選択肢を考えてみてほしい。少しの勇気と準備さえあれば、その挑戦はきっと、想像以上の満足感をもたらしてくれるはずだから。
我が家のトイレが生まれ変わった日DIY奮闘記