毎日使うお風呂の浴槽に、いつの間にか小さなひび割れ(クラック)が入っているのを見つけたら、あなたはどうしますか。「まだ小さいから大丈夫だろう」と、つい見て見ぬふりをしてしまいがちですが、その判断は非常に危険です。浴槽のひび割れは、放置することで見た目の問題だけでなく、建物の構造そのものに深刻なダメージを与える可能性がある、重大なトラブルのサインなのです。浴槽のひび割れの主な原因は、経年劣化や、重いものを落とした際の衝撃、あるいは地震による建物の歪みなど様々です。材質がFRP(繊維強化プラスチック)や人工大理石の浴槽でよく見られます。最初は髪の毛ほどの細い線でも、毎日の入浴による水圧や温度変化で、その亀裂は少しずつ広がっていきます。そして、その亀裂から水が浸入し始めると、問題は浴槽の中だけでは収まりません。漏れ出した水は、浴槽の下にある防水パンを越え、床下の木材や断熱材を湿らせます。湿った木材は腐食しやすくなり、シロアリの発生原因にもなります。最悪の場合、床が抜け落ちるという危険性も考えられます。マンションなどの集合住宅であれば、被害はさらに深刻です。階下の部屋の天井に水漏れのシミを作ってしまい、内装や家財道具への損害賠償という、高額な費用負担を伴うトラブルに発展する可能性が非常に高いのです。小さなひび割れであれば、市販の補修キットを使って自分で修理することも不可能ではありません。しかし、確実に水の浸入を止め、強度を回復させるには、専門の業者による修理が必要です。業者は、ひび割れの状況や浴槽の材質に合わせて、専用のパテで埋めたり、ライニング工法という特殊なシートで浴槽全体をコーティングしたりと、最適な方法で修理を行います。浴槽のひび割れは、家の健康を蝕む静かな脅威です。発見したら決して放置せず、早急に専門家へ相談しましょう。
浴槽のひび割れ修理は放置すると大変なことに