それは、私がこの賃貸マンションに越してきて三ヶ月目の、夏の始まりのことだった。この水漏れ修理の配管を交換した猪名川町水道局指定業者は刑事ドラマさながらに言うならば、事件は台所のシンク下という、薄暗く湿った「現場」で静かに進行していた。扉を開けるたびに鼻をつく、ドブのような、それでいて何かが腐ったような複合的な悪臭。はじめは気のせいか、あるいはゴミの臭いかと自分に言い聞かせていたが、日を追うごとにその存在感は増していき、ついに私は、この異臭事件の捜査に乗り出すことを決意した。犯人(原因)を突き止め、この部屋に平和を取り戻す。一人の賃貸暮らしの住人として、私のプライドをかけた戦いが始まった。 捜査の第一段階は、現場の徹底的な聞き込みと鑑識作業だ。まず、シンク下の収納スペースに入っているものを全て取り出し、内部をくまなく観察する。浴室専門チームをつまりトラブルには大和郡山市の水道修理業者では調味料の液だれや、野菜くずの痕跡は見当たらない。次に、シンク下の奥に鎮座する、うねうねとした灰色の排水ホース、通称「ハイカン」に事情聴取を試みる。スマートフォンのライトで照らしながら彼に近づくと、床との接合部にある「防臭キャップ」という名の帽子が、少しずれているのを発見した。これが第一の容疑者だ。私はこの隙間が外部(下水道)からの侵入経路であると断定し、粘着テープで完全に封鎖。これで事件は解決に向かうかと思われた。しかし、翌日も犯人(悪臭)は、何食わぬ顔でそこに居座り続けていた。 捜査は振り出しに戻った。粘着テープの封鎖を突破できないとすれば、犯人は内部に潜んでいる可能性が高い。私は、排水口から直接アプローチする「パイプクリーナー作戦」を決行した。強力な薬剤を流し込み、内部に潜むヘドロや汚れといった「潜伏犯」の一掃を図る。数時間後、大量の水で洗い流し、現場の様子を伺う。確かに、以前よりは臭いが弱まった気はする。しかし、扉を閉めてしばらく経ってから開けると、やはり微かにではあるが、あの不快な臭いが蘇ってくる。犯人は相当しぶとい。これは、単独犯による犯行ではない。複数の要因が絡んだ、組織的な犯行である可能性が浮上した。 ここで私は、自らの捜査能力の限界を悟った。これ以上深追いすれば、現場を荒らし、証拠を汚染してしまう(配管を壊してしまう)危険性がある。賃貸物件という現場の特殊性を鑑み、私はプロの介入を要請することにした。すなわち、管理会社への通報である。状況を説明すると、後日、水回りのプロである「業者」という名の助っ人が現場に派遣されてきた。彼は、私が苦戦した現場を一目見るなり、冷静に分析を始めた。そして、私が全く気づかなかった新たな証拠を発見したのだ。それは、排水ホースとシンク本体が接続されている部分の、ゴムパッキンの劣化だった。見た目ではわからないほどの微細な亀裂から、長期間にわたって臭気が漏れ出ていたという。さらに、排水トラップの構造自体が古く、汚れが溜まりやすい設計であることも指摘された。 最終的に、業者は劣化したパッキンを交換し、専用の高圧洗浄機で排水管の内部を徹底的にクリーニング。複合的な原因を一つひとつ潰していくことで、ついに事件は完全解決を迎えた。シンク下の扉を開けても、そこにはもう、あの不快な悪臭は存在しなかった。この一連の捜査を通じて私が学んだのは、自分の手に負えない事件に遭遇した時、ためらわずに専門家の助けを求める勇気の重要性だ。特に、我々賃貸の住人は、建物の構造という「管轄外」の問題に直面することがある。その時は、意地を張らず、速やかに管理会社という「本部」に報告・連絡・相談すること。それが、自分自身と現場(部屋)を守るための、最も賢明な捜査方針なのである。